花びら

今年はわりあい早く桜の花びらが散っている。桜の散る中を歩くと少しだけ気分が良くなる。まるで自分がなにかの物語の主人公になったかのように錯覚しているからだろう。

そして思わず桜の花びらに手を伸ばす。

...大概は手が空を掴む。まるで分不相応なものを得ようとしたかのように。掴むのを諦めた手にふと花びらが降ってきた。自ら求めることなく来た花びらだけは吸い込まれるように自然に手に馴染んだ。